ワインと旅の随想 「issyさんの日記」

bQ1 松山   2004.01月

  体調が充分ではないのですが例年通り自宅での越年を避けて年末から年始にかけて四国の松山に行っていました。新神戸から新幹線で岡山に行き松山行きの特急「しおかぜ」に乗ると三時間ぐらいで行くことが出来ます。


 松山の駅に着くと駅前に「春や昔十五万石の城下哉」の大きな子規の句碑が建っています。松山は正岡子規と高浜虚子の出身地であり夏目漱石が教鞭をとったところです。御城は加藤嘉明が創設しましたが完成を待たずに会津に移封されています。松山と言えば道後温泉も有名ですが大化の改新頃に道後の名前が出来たようです。それ以前は熱田津(にぎたづ)と呼ばれ有馬とともに日本でも最も古い温泉とされています。

 駅前の大きな通りを伊予鉄道の路面電車に乗って東に行くと行くと、大手町を過ぎて西堀端に出ます。堀の向こうは旧三の丸で「堀の内」と呼ばれ国立病院、市民会館、市営球場、競輪場、県立美術館、図書館、博物館などが並んでいます。少し右に行くと堀は直角に曲がり道は堀に沿って南堀端になります。南堀端の中央あたりで右折して南に進むと伊予鉄道の松山市駅です。JR松山駅より歴史が古く市民生活や観光に密接してるようです。駅の建物には百貨店の高島屋が入っています。建物の東の屋上には観覧車「くるりん」が聳えています。

 松山市駅で降りて駅舎の南側に出ると末広町で正岡子規の菩提寺正宗寺があり、境内の一隅に子規堂があります。子規が十七歳で上京するまで住んでいた家を復元したもので、三畳の勉強部屋に愛用の机が置いてあり、紀行文や写生帳が展示してあります。この簡素な建物は我々ぐらいの歳になると実感がわいてくるのですが若い人たちには生活の実態が判らないと思います。子規堂の前の広場には日本最古の軽便鉄道「坊ちゃん列車」の小さな客車だけが展示されています。


 松山市駅前にある地下商店街は「まつちかタウン」と呼ばれ、松山の名産品は何でも売っています。それを通り過ぎて地上に出ると東西に走るアーケード街の「銀天街」で、古くからの老舗が多いようです。間もなく松山で最も賑やかといわれる「大街道」(おおかいどう)と交差します。道幅も広くアーケードも高く明るく大型の店が多く見られます。最後には三越とラフォーレ原宿松山店があります。この1粁余りが松山の繁華街で平日休日・昼夜を問わず多くの人々が動いているそうです。


 三越の前で電車道を渡り少し西に行くと萬翠荘への道が右に折れています。一九二二年に松山藩主の子孫である久松定謨伯爵が別荘として建築したもので、彼はフランス駐在武官を永らく務めたのでフランス風に造られ、彫刻のあるチークの階段、ハワイから取り寄せたステンドグラス、シャンデリア、華麗な意匠のマントルピースなど、当時各界の名士が集まる社交場であった雰囲気が残っています。現在は愛媛県美術館分館となっているので展示のための施設があり興をそがれます。


 愚陀佛庵は夏目漱石が松山中学に教師として赴任していた時代に下宿していた三番町の上野家の離れに彼が付けた名前です。病気療養のため一時帰郷していた正岡子規が二階に約五十日間居候していました。その後彼は再び上京するのですが、松山滞在中此処で子規がたびたび句会を開きそれに漱石が出席したことが、漱石の文学に大きな影響をあたえたと言われたいます。その建物が現在萬翠荘裏の林の中に復元されています。緑の中の静かな雰囲気で「坊ちゃん」を思い出すことが出来ます。


 再び電車道に戻って西に行くと裁判所、愛媛県庁、県会議事堂などがあって、その先で右に曲がると松山城二之丸史跡庭園の入口に来ましたが、坂道が工事中で通れません。回り道は石垣の下をぐるりと左に回り松山城へ登る黒門口から登ります。運悪く休園日で見学することが出来ません。ここは藩主の邸宅があった場所です。表御殿の柑橘・草花園と奥御殿の流水園などがあるようです。仕方がないのでそのまま歩いて疎林の中を天主閣に向かって登ります。

 松山城は標高一三二米の勝山の山頂にあり、加藤嘉明が関が原の戦功を認められ一六〇二年に築城を始め二十五年後に完成したのです。天守閣は一七八四年元日に落雷により炎上したので一八二〇年に再建工事を始め一八五四年に完成したのが現在の天守閣です。息を切らせながら随分歩いてやっとロープウェイからの道に出ました。道が広くなり舗装されているので楽になりましたが、敵の勢いをそぐため急に折れたり、グネグネと曲がったりしていてなかなか天守閣には到着しません。二つの峰を削って埋め立てた平らな地面に来ました。その奥に天守閣があります。



 天守閣の下まで来ましたが病後の私には登閣して見物する余力がありません。天守閣の石垣の下を一周し外観を眺めただけで帰ることにします。帰路は途中で登る時の黒門口からの道へ入らず、広い道を長者ケ平まで行き、ロープウェイに乗り簡単に麓まで戻りました。今日は本当に疲れました。二之丸庭園から引き返して後日改めてロープウェイで登れば楽に行けたのです。ロープウェイ傍の東雲神社からの登山口もあり、東雲口と呼ばれていますがこれも登るのに三十分はかかるそうです。

 道後温泉に行くには路面電車に乗り終点の道後温泉駅で降ります。路面電車の駅でもちゃんとした建物がありホームも車庫もあります。駅前広場の一隅には「坊ちゃん列車」が展示されていますが、時刻によっては動かして路面を走る現役の乗り物です。数編成あるらしく街を歩くと良く出会います。殆どがディーゼルエンジンですが、たまには形は汽車でも目立たないように長いポールをつけた電動車もあります。古町からJR松山駅前を通り道後温泉までと、松山市駅から道後温泉までの二系統が運行されています。


 道後温泉駅前の放生園には坊ちゃんカラクリ時計、句碑、足湯などがあります。時計は一定の時刻に小説「坊ちゃん」に出てくる人物の人形が現れてきます。町の中に入り少し歩くと道後温泉本館があります。一八九四年(明治27年)に建てられた木造三層の共同浴場です。夏目漱石が赴任してくる前の年なので木の香も新しいこの浴場に喜んで通ったそうです。入口は唐破風の下に道後温泉と書かれた額があり、その下に簡単な軒があって道後温泉の暖簾がかけられています。一番高い所は太鼓櫓で一日数回鳴らされるそうです。屋根のてっぺんには鷺が飾られています。伝説によれば温泉の発見者は鷺なのです。


 放生園の傍からまっすぐ東に石段が続いています。私は石段が苦手です。でも意を決して登り始めました。途中で二度休んでやっと登りきりました。伊佐爾波神社で江戸時代初期に松平定長が建立した八幡神宮で、八幡造の神殿は全国的にも有名で重要文化財に指定されています。受験期も近いので合格祈願の絵馬が並んでいました。帰路石段の中程から右に別の石段があり、それを登ると温泉の守護神である大国主命と少彦名命を祀る湯神社があり、古くから温泉の湧き出るのが止まるたびに湯祈祷が行われたそうです。



 石段を降り切った所から左に進むと道後公園で其の一画に松山市立子規記念博物館があります。外観は蔵をイメージしてアイボリーに統一し鉄板の屋根になっています。中に入ると二・三階が展示室で二階最初の部屋は松山の歴史についての展示で、伝承の愛比売、古代、万葉、中世、藩政時代に並んでいます。次の部屋は子規と其の時代で、生い立ち、青雲の志、青春にかける日々、ジャーナリスト子規、坊ちゃんと松山の順に展示されています。三階は子規の目指した世界で、子規の年譜、子規と漱石、闘病中の文学、苦痛を乗り越えて、子規とベースボールの順に並んでいます。また新春特別展の「明治を彩った人びと」ー松山からはばたいた才能たちーが展示されていました。


石手寺は道後温泉からそんなに遠くはないのですが往路はホテルからタクシーにしました。四国霊場五十一番札所になっています。天平元年(729)行基が薬師如来を本尊にして開基し法荘宗で安養寺と呼ばれていたが、弘仁四年(813)空海がこの寺を訪れ真言宗に改め石手寺としたそうです。まず通る仁王門は立派です。安置された金剛力士像は運慶の作といわれています。新しい大きな草鞋が奉納されていました。境内の混雑の中で三重塔だけは静かに立っていました。本道裏にある都卒天洞も有名です。


 石手寺前の道を西に歩くと二十分余りで子規記念博物館にたどり着きます。其の裏手から道後公園に入りました。グランドの横から展望台に登ります。南北朝の初期に河野通盛が築いた湯築城の跡を整備して公園としたところで堀や土塁が残っています。中腹に湯釜薬師があります。温泉の守護神として祀られているもので、道後温泉本館が出来る前まで使用していた日本最古の石造りの湯釜で、一遍上人が刻んだ南無阿弥陀仏の文字があります。展望台は本丸の後と思われます。周囲が広く見渡せます。

勝山の上に松山城を築かなくても、ここでも充分要害の地と思われますが、やはり遠くからでも見えるところに大きなものを造って威力を示す必要があったのでしょう。
ここでも発掘調査による資料から家臣団や上級武士の居住地跡の武家屋敷が復元されています。また湯築城資料館があり発掘の状況も判るようになっています。其のすぐ傍が昔の大手門になるのでしょうか、大きな土塁が復元されています。そ迫から道路に出ると路面電車の公園前停留所になっていたのでそこから電車で帰りました。


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