ワインと旅の随想 「issyさんの日記」


               No.3 2002.6.


タ ク シ ー  

  現地の事情が良く判らなかったり、語学の不得意なものは苦労します。
 
 初めてパリに行った時のことです。凱旋門近くのホテルに泊まっていて、昼間は歩き回っていました。夕方になったのでホテルに帰ろうと思いシャンゼリゼーで凱旋門に向かって行くタクシーに乗ればよいと思い、歩道に立って稀に通る空のタクシーに手お上げるのですが停まってもらえません。暫く様子を見ていてやっと中央分離帯にタクシー乗り場があることが判りました。判ってしまえば何でもないのですが、その時は焦ってしまいました。今ではヨーロッパの主要都市では昼間の混まない時間帯に地下鉄を利用するのが一番便利だと思っています。混む時間帯には乗り物に乗らないようにしています。
 
 タクシーの運転手ではロンドンが世界一だと言われています。服装も態度も立派です。何よりも地理に詳しくてどんな所にでもやすやすと連れて行って呉れるそうです。また昔からきちんと独特のシートベルトを着けていました。お客が乗車する時はベルトを外して降りてきて、ドアを開け慇懃にお辞儀をして乗せてくれます。それに道路は人も車も左側通行です。車の形も一目でタクシーと判ります。
 
 今迄で一番困ったのは初めてシンガポールに行った時のことです。昼食後夕食まで暇が出来たので少し街に出てみようとホテルを出ました。ホテルの前もデパートの前もタクシー乗り場は列を作っています。街角で運よく通りかかったタクシーに手を上げると、停まってくれたので、喜んで乗り込みました。 
 
 私の英語でも運転手は何とか目的地を了解したらしく、それは大丸の近くだと言いながら走り、指示したヒンズー寺院の傍に着きました。メーター通りに支払おうとすると何かくどくどと説明します。良く判らないままに要求額の支払いを済ませましたが、現地の人に後で尋ねてみるとシンガポールのタクシー料金は加算が複雑で判りにくいのです。何よりも悪かったのはタクシー乗り場で乗らなかったことです。
 
 ゆっくり歩いて付近を見物し、夜に自室で飲むためのワインを大丸で買い、いざ帰ろうとすると、タクシー乗場はそれこそ物凄い行列です。困り果てて日本人の店員に相談しましたが、丁度その日は中国暦の大晦日だったので、中国系の人々が、それぞれ親戚知己集まって、年越しの宴会をするため、シンガポールのタクシーを殆ど全部借り上げていたのです。おそらく真夜中を過ぎないと、タクシーには乗れないでしょうとのことです。
 
 判りにくいバス停の位置を店員に教わっていると、運よく日本人の買物客が来て、バス停まで案内してくれました。丁寧にお礼を云って別れたのですが、別れてから案内板を見ると、私達が乗ろうとするバスは通らないことが判りました。
 
 重たいワインを持っているし、さあ大変です。知っている限りの単語をならべ、正しいバス停の位置を何人もの人に次々に質問し、何度も道に迷いながらやっと目的のバス停にたどり着きました。そこでまた中国語か英語かわからない言葉を使い、なんとかヒルトンホテルの近くまで行くバスを教わって、どうやら車に乗り、運転手に料金を支払い席に着くことが出来ました。
 
 バスには運よく現地の海外旅行添乗員経験者が乗っていて、ある程度の日本語を話し、私達が取りそこねた乗車券を、運転席後方の発券機から取ってくれたり、宿泊しているホテルをたずねて、ヒルトンに一番近いホリディ・インのそばのバス停で、降ろしてくれたりしました。
 
 彼女が乗っていなかったら、降車場所が判らなくて、途方もないところで降り、困っていたことでしょう。地獄に仏と云う言葉がありますが、本当に助かりました。しかしその時は心に余裕がなかったので、お礼の言葉もそこそこに下車してしまいました。
 
 ともあれ心身ともにへとへとに疲れ果てながらも、やっと約束していた夕食の時間までにホテルに帰り着きました。お蔭で特別美味しいワインを飲むことが出来ました。
 
 とても幸運だったのは中国の西安に行ったときです。同行の人たちは秦の宮廷料理の夕食と、宮廷舞踊のショーを見に行くと言いましたが、私は疲れていますし中国のお酒と料理には少し飽いています。長安路の西安賓館前でみんなと別れタクシーに乗せてもらってホテルに向かいました。
 
 丁度薄暗くなった頃で大変な混雑です。交通信号機の整備が遅れているので交差点ではひどい混乱状態です。環城南路の和平門前の交差点内で、全く停まってしまいました。体格が良くおとなしそうな運転手でしたが、自ら下りていって、体を張って大声で混雑を整理し、うまく通過してくれたので大いに助かりました。
 
 ホテルに着いた時メーターは一〇元を示していましたが、上手に運んでくれたので一〇元の他に五元渡すと、喜んで何度も手を振りながら去って行きました。その当時は西安のタクシー運転手は中国でも最も評判が悪く、よく不法な料金を請求したそうですが、よい運転手にめぐり遭って幸でした。
 
 夕食はホテルで数日ぶりにフランス料理を食べ赤ワインを飲むことが出来ました。
 
 ではまた・・・・issy・・・
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