ワインと旅の随想 「issyさんの日記」

bP5 旅行と歴史 2003.4月


 私が外国を旅行して痛切に感じることは歴史に対する知識の乏しさです。特に外国で嫌でも眺めるのは建築物で、これには建築様式の知識が必要です。次に絵画・彫刻などですがこれにも様式が絡まってくるだけでなく歴史的な神話又は聖書の知識が必要になってきます。

 遺跡と呼ばれる古いローマのコロッセオとかフォロ・ロマーノなどについては余り考えずに眺められますが、パンテオンになると丸いドームを頂いた建物で二世紀に改修されたものです。これがロマネスク様式の走りとも言われているようです。

 ロマネスク様式は十世紀から十二世紀にかけて盛んだった建築様式で、古代ローマ風の意味であり南仏に始まり急速に広がったといわれています。厚壁で重量感があり、半円アーチを頂くものが多く,彫刻・絵画などに奇怪な題材が装飾化されているのが特徴といわれています。

 ピザは十一世紀から十三世紀にかけて栄えた大海軍国でした。一一一八年に完成したピサ本寺がロマネスク様式の代表とされていますが、イタリアで最も古い寺院であそばに建っている斜塔や、ガリレイが振り子の等時性を発見したといわれる青銅の釣りランプが有名です。正面は七つのアーチと三つの入口があり、その上は四層の列柱とアーチで飾られています。斜塔は一一七四年に着工されましたが、十米の高さになった時地盤沈下で傾いてしまいました。しかし少しずつ補正して建築を続行し完成させています。そのため各層の床は平行ではありません。その後も次第に傾斜が進んで、私が行った一九九九年には近いうちに倒壊すると言われ塔に登ることが出来ませんでしたが、現在は補強工事が成功して登ることが許されているそうです。白亜の大理石で作られた高さ五四米の塔で周囲は各層とも列柱とアーチで飾られ美しく、斜塔にならなくても充分有名になったと思います。

 ゴシック様式は十三世紀から十五世紀にかけて盛んだったもので、ゴート風という意味で北仏に始まり急速に全ヨーロッパに広がりました。まっすぐ上に高く延びることを原則とし、窓や出入口などの開口部や列柱などに尖頭アーチを使い、屋上に高く尖塔を設けています。天井は肋骨で支えられ、窓も大きく建物も大きいのが特徴です。またこの時代はルネサンスの時期と重なり、芸術的にも大いに発展しました。

 パリのノートルダム寺院がゴシック建築の代表です。一一六三年に起工され一二三五年に完成しています。数々の国家的行事がここで行われましたが十八世紀のフランス革命でカソリック教会が弾圧され、建物は政府の管理下におかれましたが荒廃が進み大切な文化財が散逸しました。一八○二年ナポレオンによって寺院が再び教会の手に戻り修復が始まり、一八○四年にはナポレオンの戴冠式が行われました。その華々しい情景はルーブル美術館にあるダビッドの絵で窺い知ることが出来ます。その後も修復が続けられ一八六四年に完成し現在のようになりました。

 私が初めて行ったのは一九八三年でしたが、正面にあるノートルダム広場から眺めると、左が北塔、右が南塔で、北塔のほうがやや幅が広いのですが、高さは同じ六九米です。映画で有名な「ノートルダムのせむし男」に出てくる十三トンもある大鐘は南塔にあるそうです。両塔の間の後方には高さ九○米の尖塔が見えます。

 正面上部中央には有名なステンドグラスの大きな丸窓があります。西のバラ窓です。その両側にも丸窓があり、左はアダム像が、右はイブ像が飾られています。各窓の下にはそれぞれ入口があり、左から聖女マリア、最後の審判、聖女アンヌの入口と名づけられ、それぞれを主題とする浮彫りで飾られています。 

 内部に入ってみるとやはりあらゆる所に彫刻が施されていて、昔は文盲の人が多かったため、寺院全体を彫刻による「石の聖書」としたのだそうです。南北の壁面のほぼ中央、高い所にバラ窓があります。北のバラ窓は青を基調にして聖母マリアを描いてあり、一二七○年に作製され殆どそのままだそうです。南のバラ窓は赤を基調にしキリストを主題にしたもので十八世紀に修復されています。外からも眺めた西のバラ窓は十三世紀のもので、二人の天使に見守られている聖母子が描かれていました。

 セーヌ川の舟からながめる低い位置からの景色も独特です。高い尖塔や天井の肋骨を支えるための建物外に並んだ柱が目立つ姿も美しいと思います。セーヌ河の観光船に乗ると簡単に眺めることが出来ます。

 バロック様式とは十七世紀から十八世紀にかけて盛んだったもので、イタリアで始まり全欧州に広がりました。反宗教改革的、絶対王政の美術と言われルネサンスの古典主義に対し有機的流動的とされています。ルネサンス以後バロック以前の芸術様式にマニエリズムがあります。誇張が多く技巧的で自己特異性を表現していてティントレットとかエルグレコが代表と言われています。

 ローマの聖ピエトロ寺院がバロック様式として有名です。反宗教革命的とは乱発された免罪符をきっかけにして起こったルターなどの宗教革命に対抗するために自浄運動を盛んにするなどと並んで、カソリックによる絶対政治を見直そうとする機運が見られます。この寺院はコンスタンチノス帝がキリスト教を認めた西暦三一三年の後三二○年殉教者ペトロの墓の上に創建され、六世紀にはグレゴリウス大教皇によって拡張されていたのですが、初期の建物が政治などの腐敗やキリスト教内部の混乱で荒廃したので、十六世紀に新しい聖ピエトロ寺院の建設が始まりました。歴代の教皇が力をいれ、当時のベルニーニやミケランジェロなど芸術の巨匠たちが力をあわせて百五十年もかけて完成させました。建築や絵画・彫刻についてはとても限られた時間には説明し切れません。ミケランジェロの嘆きのピエタ、天地創造、最後の審判などが最も有名です。

 ロココ様式と言うのがあります。十八世紀に盛んだった装飾様式です。ロカイユ(貝殻)風又はロック(岩石)風の意味だそうで曲線模様が多く繊細優美とされています。複雑な渦巻、花飾、唐草などの曲線に淡彩と金色を併用しています。宮殿などの屋内装飾によく用いられています。

 私の今まで書いたものを読み返して少し勉強してみました。

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