ワインと旅の随想 「issyさんの日記」


               No.4 2002.6.


4    
地下鉄     

  地下鉄といえば香港の地下鉄での失敗から白状しましょう。一人で歩いたので黙っていれば良かったのですが既に何人かの人に洩らしてしまいました。
 
 船の旅でしたが香港に寄港し九龍の埠頭に着きました。何度も来た所ですし買物もないので上陸しないつもりで、香港ドルへの両替をしていませんでした。でも余り暇なので少し散歩する積もりで外に出ました。すぐ近くに三越があったのですが既に退店していたので、少し離れた東急デパートに行ってハンカチを一枚買い、日本円の千円札を出しおつりは香港ドルで良いと頼みました。

 旅慣れた人は小額の現地通貨が欲しいときによくこの手を使うそうです。これで約50香港ドルの硬貨を貰いました。これで香港島の繁華街まで行きたいのですが、地下鉄で往復すると少し窮屈です。まず3ドルでスターフェリーのセントラル行きに乗りました。

 このフェリーは香港が租借地になって以来続いている歴史あるフェリーです。昔は中国本土の九龍から香港島へビクトリア海峡を渡る唯一の交通機関でした。今は地下道が二本と地下鉄のトンネルも二本出来ていますが、廉くて、速くて、眺めが良いのは何といってもこのフェリーです。両岸の景色が美しく眺められます。

 セントラルはビジネス街です。官庁街や公園などを散歩してから地下鉄の駅に行きました。発券機がずらりと並んでいますが故障しているものも多いので、乗車しようとする人が行列を作っています。なんとか無事にコーズウェイベイ迄の切符を買いました。

 改券機に切符を通して急ぎ足でホームに向かったのですが、後で大声で何か叫んでいるようですが意味が判らなかったのでさっさと歩いて行きました。ホームで電車を待っていると次々に人々がやってきます。まだ切符を手に持った人もいます。ハッ!と気が付きました。私は切符を取り忘れてきたのです。

 さあ大変です。あわてて改券機の所まで戻り若い駅員を捕まえて説明するのですがなかなか判ってくれません。やっと判ってくれたようですが何か証明するものはないかと言うようです。そんなものあるはずがありません。やっと認められてコーズウェイベイ行の臨時切符を発行してもらって安心しました。

 コーズウェイベイに着きましたが何となく気乗りがしません。商品を見てもうわの空ですし、料理店の前を通っても食欲も感じません。そごうデパートを覗いたり、付近の商店街を眺めて早々に引き上げることにしました。

 帰りは地下鉄だけで帰ります。しかし乗換が一回あるのです。こんな時ですからまた何か失敗するのではないかと気が重くなります。乗換も複雑でしたが案内板などは判りにくい現代の中国文字よりも英語が多く、判りやすくて安心しました。

 この日の夕食は船で食べましたが、いつものワインがとてもおいしく感じました。

 昔話になりますが東京に初めて地下鉄が開通した頃は上野・浅草間だけでした。乗車券を買うのではなく、入口で機械に硬貨を入れて水平の腕木を体で押して入るようになっていました。小さかった私は一人で勝手に腕木を潜って出入りし、ひどく怒られたことを覚えています。これは古いロンドンの地下鉄をお手本にしたらしいのですが、ロンドンで地下鉄のトイレにこの腕木方式を見かけたという人がありました。

 やがて新橋まで延長され、さらに渋谷までつながり現在の銀座線になったのです。電気を取り入れる方式が違っていて軌道の横からとるので、ポイントを渡るたびに照明が切れ小さな予備燈がつく方式はいまも変わっていません。次に出来た丸の内線も下から取りますから郊外電車の乗入れはありません。

 渋谷では一階は横浜に行く東横電車、二階は省線電車の山手線、地下鉄は何故か東横百貨店三階のホームから発車します。当時の私にはどう考えても不思議でたまりませんでした。

 やがて丸ノ内線が出来て随分便利になり、あの複雑な市内電車やバスを使わなくて
も、地下鉄の銀座線と丸ノ内線、それに省線電車、国電、JRと呼び名の変わった山手線を使えば不自由しなくなりました。

 それが今では地下鉄が驚異的に発達し、営団の他に都営が加わり、郊外からは私鉄が乗り入れてきて、利用する前に充分研究して乗らなければ迷子になってしまいます。

 大阪でも複雑になったのは同じです。これで良いのかなあと思っているうちに、札幌、仙台、横浜、名古屋、京都、神戸、福岡と地下鉄が増えてきました。しかしこれらの都市の路線は判りやすくて早くて便利なようです。

 話は変わりますが、初めてロンドンに行ったときのことです。グロブナーハウスというホテルに宿泊していました。翌朝早く起きてすぐ近くのハイドパークに行こうとしたのですが、パークレーンという広い通りは赤い二階バスなどの往来が激しく渡ることが出来ません。傍らにサブウェイと表示された階段があったので、地下鉄の駅に入れば反対側に出る階段があると思って下りてみました。しかし駅は存在せず、つきあたりの階段を上がると道路の反対側に出てきました。サブウェイとはその名の通り地下道だったのです。

 外国でも地下鉄が多くなりました。私が乗っただけでも、ロンドン、パリ、ウィーン、ミラノ、ローマ、マドリード、バルセロナなどにありますが、通勤時間以外はこれを利用するととても便利です。通勤ラッシュ時は避けたほうが良いと言われました。ロンドンがテューブでウィーンはウーバーン、あとはメトロといえば判ります。

 ロンドンの地下鉄をたっぷりと利用させてもらったのは7〜8年前でした。観光客用に乗り降り自由の一日切符を売っている書いてあったので早速試してみました。

 宿泊していたのは国鉄メリルボーン駅に近く一年前に改装したばかりのホテルでした。玄関前に地下鉄への階段があります。サブウェイステイションと書いてありました。それを下りて改札口近くの窓口で一日乗車券と告げると、駅員は何かくどくどと説明してくれます。あわててパンフレットを読んでみると乗り降り自由の範囲によって料金が違うことが判りました。そこで中心部だけと告げると、また何か説明しながら売ってくれました。3ポンド余りでした。あとで調べてみたらこの駅は中心部からほんの少し離れているから料金が高くなると言うことだったようです。

 メリルボーン駅からシャーロックホームズで有名なベイカー街駅で下り、博物館の外観を眺め、リージェント公園を散歩し、同公園駅から乗りナイツブリッジ駅で下り、ハイドパークを散歩し、ハイドパークコーナー駅からチャリングクロス駅に来ました。ナシヨナルギャラリー(国立美術館)とポートレートギャラリーと見て回り、レスター広場を通ってピカデリーサーカス迄歩き、三越を覗き、ピカデリーサーカス駅から乗ってトッンハイムコート通り駅で下りましたが、私が考えていた雰囲気と違います。すぐ地下鉄でラッセルスクウェアー迄行きました。ラッセル広場を眺めながらサンドウィッチと赤ワインではなくジュースで昼食を食べ、大英博物館をゆっくり回り、地下鉄に乗ってメリルボーンのホテルに帰りました。廉くて手軽な観光でしたが案外疲れました。

ではまた・・・・・ issy


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